「第3章:主な医薬品とその作用」の2回目だよ
問題作成ポイントはこれ!
❶ 一般用医薬品において用いられる主な有効成分に関して基本的な効能効果及びその特徴、飲み方や飲み合わせ、年齢、基礎疾患等、効き目や安全性に影響を与える要因、起こり得る副作用等につき理解し、購入者への情報提供や相談対応に活用できること
❷各薬効群の医薬品に関する情報提供、相談対応における実践的な知識が理解できること
≫勉強法①【第3章】Ⅰかぜ薬
1)痛みや発熱が起こる仕組み、解熱鎮痛薬の働き
痛みや発熱の原因
●痛み
⇒病気や外傷などに対する警告信号
●発熱
⇒細菌やウイルスなどの感染等に対する生体防御機能
月経痛(生理痛)などのように、必ずしも病気が原因といえない痛みもあります
プロスタグランジンの働き
脳の下にある
●温熱中枢に作用して、体温を通常よりも高く維持するように調節する
●炎症の発生にも関与する
プロスタグランジンは病気や外傷があるときに産生され、痛みが脳へ伝わる際に、そのシグナルを増幅させ痛みの感覚を強めます
解熱鎮痛薬の作用
●病気や外傷を根本的に治すものではなく、病気や外傷が原因の発熱や痛みを緩和するために使用される医薬品の総称
多くの解熱鎮痛薬には、体内におけるプロスタグランジンの産生を抑える成分が配合されています
解熱鎮痛薬の目的
❶鎮痛
⇒痛みのシグナルの僧服を防いで痛みを鎮める
❷解熱
⇒体温調節メカニズムを正常に戻して熱を下げる
❸抗炎症
⇒腫れなどの症状を軽減する
月経痛(生理痛)の、腹痛を含む痙攣性の内臓痛は発生の仕組みが異なるため、一部の漢方処方製剤を除き、解熱鎮痛薬の効果は期待できません
2)代表的な配合成分等、主な副作用
「化学的に合成された成分」と「生薬成分」に大別される
解熱鎮痛成分(化学的に合成された成分)
解熱鎮痛成分の適する症状
●悪寒・発熱時の解熱
●頭痛、歯痛、関節痛
●月経痛(生理痛)
●外傷痛
発熱、炎症反応への効果
●発熱に対しては
⇒中枢神経系のプロスタグランジンの産生を抑える
⇒腎臓での水分の再吸収を促して循環血流量を増し、発汗を促す
●炎症反応に対しては
⇒局所のプロスタグランジン産生を抑え、炎症を鎮める
(アセトアミノフェンの場合を除く)
心臓・腎臓・肝臓への影響
●心臓に障害がある場合は、症状を悪化させるおそれがある
⇒循環血流量増加は心臓への負担を増大させるため
●腎機能に障害がある場合は、症状を悪化させるおそれがある
⇒末梢のプロスタグランジンの抑制は、腎血流量を減少させるため
●肝機能に障害がある場合は、症状を悪化させるおそれがある
⇒解熱鎮痛成分が代謝されて生じる物質でアレルギー性の肝障害を誘発する
胃への影響
●胃酸分泌増加
●胃壁の血流量低下
●胃粘膜障害
●胃・十二指腸潰瘍があると、症状を悪化させるおそれがある
胃への悪影響を軽減するため、なるべく空腹時を避けて服用します
解熱鎮痛成分の副作用
まれに重篤な副作用として、
●ショック
●皮膚粘膜眼症候群
●中毒性表皮壊死融解症
●喘息
を生じることがあります。
喘息は、アスピリン特有の副作用ではなく、他の解熱鎮痛剤でも起こります
解熱鎮痛成分の種類(化学的に合成された成分)
サリチル酸系解熱鎮痛成分
●アスピリン(アセチルサリチル酸)
●サザピリン
●エテンザミド
●サリチルアミド
注意事項
❶サリチル酸系解熱鎮痛成分で特に留意されるべき点は、
●ライ症候群の発生が示唆されている
⇒アスピリンおよびサザピリンは、15歳未満の小児に対しては、一般用医薬品として使用してはならない
❷アスピリンは、ほかの解熱鎮痛成分と比較して
●胃腸障害を起こしやすい
⇒アスピリンアルミニウムなどとして胃粘膜への悪影響の軽減を図っている製品もある
●血液を凝固しにくくさせる作用がある
⇒出産予定12週以内の使用はさける
❸エテンザミドおよびサリチルアミドは、
⇒水痘(水疱瘡)またはインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対しては使用を避ける
❹エテンザミドは、
●痛みの伝わりを抑える働きが作用の中心
⇒他の解熱鎮痛成分と組み合わせて配合されることが多い
●ACE処方
⇒アセトアミノフェン、カフェイン、エテンザミドの組合せ
アセトアミノフェン
●中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらす
⇒末梢における抗炎症作用は期待できない
⇒胃腸障害は比較的少なく、空腹時に服用できる製品もある
注意事項
まれに重篤な副作用として
●皮膚粘膜眼症候群
●中毒性表皮壊死融解症
●急性汎発性発疹性膿庖症
●間質性肺炎
●腎障害
●肝機能障害
を生じることがあります。
※過量使用や、日頃から酒類(アルコール)をよく摂取する人で起こりやすい
内服薬のほか、小児の解熱に用いる製品としてアセトアミノフェンが配合された坐薬もあります
イブプロフェン
胃腸への悪影響が少なく、抗炎症作用も示す
●頭痛
●咽頭痛
●月経痛(生理痛)
●腰痛
などに使用する。
注意事項
まれに重篤な副作用として
●肝機能障害
●腎障害
●無菌性髄膜炎
を生じることがあります。
●一般用医薬品では、15歳未満の小児に対して、いかなる場合も使用しない
●出産予定日まで12週以内の妊婦も服用しない
●胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン氏病の既往歴がある人
⇒再発を招くおそれがある
イソプロピルアンチピリン
●ピリン系と呼ばれる解熱鎮痛成分
●解熱・鎮痛の作用は比較的強いが、抗炎症作用は弱い
⇒ほかの解熱鎮痛成分と組み合わせて配合される
注意事項
●ショックなどの重篤な副作用が頻発
⇒一般用医薬品で唯一のピリン系解熱鎮痛成分となっている
間違いやすいですが、アスピリンやサザピリンは「非ピリン系」です
解熱鎮痛成分(生薬成分)
ジリュウ
フトミミズ科のPheretima aspergillum Perrier 又はその近縁動物の内部を除いたものを基原とする生薬で、古くから「熱さまし」として用いられてきた
シャクヤク
ボタン科のシャクヤクの根を基原とする生薬で、鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられている
ボウイ
ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎及び根茎を、通例、横切したものを基原とする生薬で、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる
その他
※カンゾウ・ショウキョウ・ケイヒ・コンドロイチン硫酸ナトリウムなど
抗炎症作用
⇒カンゾウが配合されている場合がある
解熱作用
⇒ショウキョウ、ケイヒ
関節痛・肩こり
⇒コンドロイチン硫酸ナトリウム
解熱鎮痛成分(その他の配合成分)
解熱鎮痛薬に配合される成分のうち、解熱鎮痛以外の配合成分についてみていきましょう
鎮静成分
●ブロモバレリル尿素
●アリルイソプロピルアセチル尿素
- 解熱鎮痛成分の鎮痛作用を助ける目的で、配合される
- いずれも依存性あり
- 生薬成分として、カノコソウなどが配合されている場合もある
胃酸を中和する成分(制酸成分)
●ケイ酸アルミニウム
●酸化マグネシウム
●水酸化アルミニウムゲル
●メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
- 解熱鎮痛成分による胃腸障害の軽減を目的で、配合される
- 胃腸症状に対する薬効を標榜することはできない
骨格筋の緊張を鎮める成分
●メトカルバモール
- 脊髄反射を抑え「筋肉のこり」を和らげ鎮痛作用を示す
- 副作用として眠気、めまい、ふらつきが現れることがある
- 消化器系の副作用は、悪心、嘔吐、胃部不快感など
カフェイン類
●カフェイン
●無水カフェイン
●安息香酸ナトリウムカフェイン
- 解熱鎮痛成分の鎮痛作用を増強する効果
- 頭をすっきりさせたり、疲労感・倦怠感を和らげる
※鎮静成分の作用による眠気が解消されるわけではありません。
ビタミン成分
●ビタミンB1
●ビタミンB2
●ビタミンC
- 発熱等で消耗されやすいビタミンの補給が目的
解熱鎮痛成分(漢方処方製剤)
●桂枝加朮附湯
●桂枝加苓朮附湯
●薏苡仁湯
●麻杏薏甘湯
●疎経活血湯
●当帰四逆加呉茱萸生姜湯
●呉茱萸湯
●釣藤散
※呉茱萸湯以外は、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む
※芍薬甘草湯以外は、比較的長期間(1か月位)服用されることがある
それでは、鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤についてみていきましょう
芍薬甘草湯しゃくやくかんぞうとう
●体力に関わらず、痛みのあるこむらがえり、筋肉の痙攣、腹痛、腰痛に適す
●症状がある時のみの服用、連用はさける
●まれに重篤な副作用として
- 肝機能障害
- 間質性肺炎
- 鬱血性心不全
- 心室頻拍
を生じることがある
●心臓病の診断を受けた人では使用を避ける必要がある
※カンゾウ含む
桂枝加朮附湯・桂枝加苓朮附湯
けいしかじゅつぶとう・けいしかりょうじゅつぶとう
●いずれも体力虚弱で、汗が出、手足が冷えてこわばり、尿量が少ないものの関節痛、神経痛に適す
●のぼせが強く赤ら顔で体力が充実している人には不向き
※カンゾウ含む
薏苡仁湯・麻杏薏甘湯
よくいにんとう・まきょうよくかんとう
薏苡仁湯
●体力中等度で、関節や筋肉のはれや痛みがあるものの関節痛、筋肉痛、神経痛に適す
麻杏薏甘湯
●体力中等度で、関節痛、神経痛、筋肉痛、いぼ、手足のあれ(湿疹・皮膚炎)に適す。
●体の虚弱な人、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人には不向き
※カンゾウ・マオウを含む
疎経活血湯そけいかっけいとう
●体力中等度で痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛に適す
●胃腸が弱く下痢しやすい人には不向き
※カンゾウ含む
当帰四逆加呉茱萸生姜湯とうきしぎゃくかごしゅうゆしょうきょうとう
●体力中等度以下で、下肢の冷えが強く、下肢又は下腹部が痛くなりやすいものの
冷え症、腰痛、下腹部痛、頭痛、しもやけ、下痢、月経痛に適す
●胃腸の弱い人には不向き
※カンゾウ含む
釣藤散ちょうとうさん
●体力中等度で、慢性頭痛、めまい、肩こりがあるものの慢性頭痛、神経症、高血圧の傾向のあるものに適す
●消化器系の副作用が現れやすいなど、胃腸虚弱で冷え性の人には不向き
※カンゾウ含む
呉茱萸湯ごしゅゆとう
●体力中等度以下で手足が冷えて肩がこり、ときにみぞおちが膨満するものの
頭痛、頭痛に伴う吐きけ・嘔吐、しゃっくりに適す
※カンゾウを含まない
3)相互作用、受診勧奨
相互作用
⇒複数の有効成分が配合されている製品が多くある
●ほかの解熱鎮痛薬やかぜ薬、鎮静薬、外用消炎鎮痛薬などを併用する
⇒成分が重複して、効き目が強く現れすぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがある
アルコールとの相互作用
●アルコールの作用によって胃粘膜が荒れる
⇒アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、イソプロピルアンチピリン等による胃腸障害が増強される
●アセトアミノフェンでは
⇒肝機能障害が起こりやすくなる
受診勧奨等
以下の場合、一般用医薬品を使用せず、医療機関を受診するなどの対応が必要です
発熱
●消化器症状
⇒激しい腹痛・下痢
●呼吸器症状
⇒息苦しさ
●泌尿器症状
⇒排尿時の不快感
●皮膚症状
⇒発疹やかゆみ
●発熱が1週間以上続いているような場合
通常、体温が38℃以下であれば、ひきつけや著しい体力消耗などのおそれはなく、平熱になるまで解熱鎮痛薬を用いる必要はありません
関節痛
●関節が腫れて強い熱感がある・起床した時に関節のこわばりがある
⇒関節リウマチ、痛風、変形性関節炎などの可能性
月経痛
●年月の経過に伴って悪化する場合
⇒子宮内膜症の可能性
頭痛
●頻繁現れて24時間以上続く・一般用医薬品を使用しても抑えられない場合
●激しい突然の頭痛・手足のしびれ・意識障害を伴う
⇒くも膜下出血の可能性
●解熱鎮痛薬を頭痛の症状が軽いうちに服用すると効果的
症状が現れないうちに予防的に使用すると、かえって頭痛が常態化してしまう場合があります!
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