「第3章:主な医薬品とその作用」の3回目だよ
※この記事は「平成30年3月 試験問題の作成に関する手引き」をもとに作成しています。
眠気を促す薬
● 催眠鎮静薬とは
ストレスや生活環境などにより自律神経系のバランスが崩れ、寝つきが悪い、眠りが浅い、いらいら、精神興奮、精神不安といった精神神経症状を生じることがあります。
それらの症状のため疲労倦怠感、寝不足感、頭重などの身体症状を伴う場合もあります。
催眠鎮静薬は、そうした症状を生じたとき、睡眠を促したり、精神のたかぶりを鎮めるため使用される医薬品です。
1)代表的な配合成分等、主な副作用
抗ヒスタミン成分
ヒスタミンの作用
●脳の下部にある睡眠・覚醒に関与する部位で神経細胞を刺激して、覚醒の維持や調節を行う
ヒスタミンの働きが、抗ヒスタミン成分で抑えられると眠気がおこります
●ジフェンヒドラミン塩酸塩
⇒抗ヒスタミン成分の中でも特に中枢作用が強い成分
服用時の注意点
●妊婦
⇒ホルモンのバランスや体型の変化等が原因であり、睡眠改善薬の適用対象ではない
●小児
⇒眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがあり、使用を避ける
●その他
⇒服用後は、自動車の運転など、危険を伴う機械の操作を避ける
ブロモバレリル尿素 アリルイソプロピルアセチル尿素
いずれも脳の興奮を抑え、痛みなどを感じる痛覚を鈍くする
服用時の注意点
●反復して摂取すると依存を生じる
●服用後は、自動車の運転など、危険を伴う機械の操作を避ける
●ブロモバレリル尿素は
⇒胎児に障害を引き起こす可能性
⇒妊娠していると思われる女性は使用を避ける
生薬成分
神経の興奮・緊張を和らげる生薬
●チョウトウコウ
●サンソウニン
●カノコソウ
●チャボトケイソウ
●ホップ
生薬成分のみからなる鎮静薬でも、複数の鎮静薬の併用や、長期連用は避けるべきです
チョウトウコウ
●アカネ科のカギカズラ、ウンカリア・シネンシス又はウンカリア・マクロフィラの通例とげを基原とする生薬
サンソウニン
●クロウメモドキ科のサネブトナツメの種子を基原とする生薬
カノコソウ
●オミナエシ科のカノコソウの根茎及び根を基原とする生薬
チャボトケイソウ
●南米原産のトケイソウ科の植物で、その開花期における茎及び葉が薬用部位となる生薬
ホップ
●ヨーロッパ南部から西アジアを原産とするアサ科のホップの成熟した球果状の果穂が薬用部位となる生薬
漢方処方製剤
神経質、精神不安、不眠等の症状を改善する漢方処方製剤
●酸棗仁湯
●加味帰脾湯
●抑肝散
●抑肝散加陳皮半夏
●柴胡加竜骨牡蛎湯
●桂枝加竜骨牡蛎湯
体質の改善を主眼としているため、比較的長期間(1か月位)服用されることがあります
酸棗仁湯さんそうにんとう
●体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがある不眠症、神経症の人に適す
●胃腸が弱い人、下痢傾向のある人には不向き
●1週間位服用して症状の改善がみられない場合
⇒医療機関を受診するなどの対応が必要
加味帰脾湯かみきひとう
●体力中等度以下で、心身が疲れ、血色が悪く、ときに熱感を伴うものの
貧血、不眠症、精神不安、神経症に適す
抑肝散よくかんさん
●体力中等度をめやすとして幅広く用いることができる
●神経がたかぶり、怒りやすい、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症、歯ぎしり、更年期障害、血の道症に適す
●心不全を引き起こす可能性がある
⇒動くと息が苦しい、足がむくむ場合は医師の診療を受けるべき
抑肝散加陳皮半夏よくかんさんかちんぴはんげ
●体力中等度をめやすとしてやや消化器が弱いものに幅広く用いることができ
●神経がたかぶり、イライラなどがあるものの神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症、更年期障害、血の道症、歯ぎしりに適す
柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう
●体力中等度以上で、精神不安があり、動悸 、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適す
●体の虚弱な人、胃腸が弱く下痢をしやすい人には不向き
●まれに肝機能障害、間質性肺炎を生じる
●構成生薬としてダイオウを含む
桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう
●体力中等度以下で疲れやすく、興奮しやすいものの
神経質、不眠症、小児夜なき、夜尿症、眼精疲労、神経症に適す
●構成生薬としてカンゾウを含む
2)相互作用、受診勧奨等
相互作用
ジフェンヒドラミン塩酸塩、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は、ほかの医薬品にも配合されており、併用により効き目や副作用が増強されるおそれがある
●医療機関で不眠症、不安症、神経症などの治療を受けている人
⇒使用を避ける
●アルコール摂取は催眠鎮静薬の薬効や副作用が増強されるおそれがある
⇒服用時には飲酒を避ける
生薬成分のみや漢方処方製剤の場合は、飲酒を避けることとはなっていませんが、睡眠の質の低下や、薬効を妨げることがあります
受診勧奨等
一般用医薬品で対処可能なのは
特段の基礎疾患がなく、ストレス・疲労など、一時的な不眠や寝つきが悪い場合
次のような場合には、医療機関を受診させるなどの対応が必要です
●入眠障害
⇒寝ようとしても、なかなか寝付けない
●熟睡障害
⇒睡眠時間を十分取っても、寝た感じがしない
●中途覚醒
⇒睡眠中何度も目が覚めて、再び寝付くのが難しい
●早朝覚醒
⇒眠りたいのに早く目が覚めてしまい、寝付けない
眠気を防ぐ薬
● 眠気防止薬とは
睡眠は健康維持に欠かせないものですが、眠気や倦怠感を除去する目的とする医薬品です。
主たる有効成分としてカフェイン(無水カフェイン、安息香酸ナトリウムカフェインなど)が配合されています。
1)カフェインの働き、主な副作用
カフェインの効果
脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気、倦怠感を抑える
カフェインの作用
● 脳が過剰に興奮による副作用
⇒振戦(震え)、めまい、不安、不眠、頭痛など
● 腎臓におけるナトリウムイオン(同時に水分)の再吸収を抑制する
⇒尿量の増加(利尿効果)
一般的な留意点・副作用
●胃液分泌亢進作用は
⇒胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)をおこす可能性がある
●胃酸過多、胃潰瘍の人は
⇒服用をさける
●心臓病の人は
⇒心筋を興奮させ、動機が現れるので服用をさける
妊娠時における胎児への影響
●血液ー胎盤関門の通過し、胎児へ到達する
⇒胎児の発達に影響をおよぼす可能性がある
●カフェインの一部は、乳汁中へ移行する
⇒乳児の体内にカフェインが蓄積して、頻脈、不眠などを引き起こす可能性がある
眠気による倦怠感を和らげる補助成分
眠気による倦怠感を和らげる補助成分として、次の成分などが配合されている場合があります
●ビタミンB1
●ビタミンB2
●パントテン酸カルシウム
●ビタミンB6
●ビタミンB12
●ニコチン酸アミド
●アミノエチルスルホン酸
2)相互作用、休養の勧奨等
相互作用
眠気防止薬におけるカフェインの上限は、
●1回摂取量⇒カフェインとして200mg
●1日摂取量⇒カフェインとして500mg
とされています。
カフェインは、ほかの医薬品や食品にも含まれているため、眠気防止薬と同時に摂取するとカフェインが過量となり、中枢神経系や循環器系への作用が強く出るおそれがあります
休養の勧奨等
●眠気防止薬は、一時的に精神的な集中を必要とするときに使用されるもの
疲労を解消したり睡眠が不要になるものではありません!
●細菌やウイルスなどに感染したときに生じる眠気に使用
⇒睡眠を妨げると、病気の治癒を遅らせる
●成長ホルモンの分泌を促す脳ホルモンはある種の睡眠物質と同時に分泌され、睡眠を促進する⇒定期的な睡眠により、生体を正常な状態に維持し、成長が行わる
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