「第3章:主な医薬品とその作用」の9回目です!
※この記事は「平成30年3月 試験問題の作成に関する手引き」をもとに作成しています。
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痔の薬
1)痔の発症と対処、痔疾用薬の働き
- 痔は肛門付近の血管がうっ血し、肛門に負担がっかかることによって生じる肛門の病気の総称です。
- 主な病態として、痔核、裂肛、痔瘻があります。
痔の病態
痔核
肛門に存在する細かい血管群が部分的に拡張し、肛門内にいぼ状の腫れが生じたもの。
一般に「いぼ痔」と呼ばれます。
便秘や長時間同じ姿勢でいる等、肛門部に過度の圧迫をかけることが主な要因とされています。
内痔核
直腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より上部の、直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼びます。
自覚症状が少ないことが特徴です。
排便時に、肛門から成長した痔核がはみ出る脱肛、出血などの症状が現れます。
外痔核
直腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より下部の、肛門の出口側にできた痔核を外痔核と呼びます。
排便と関係なく、出血や患部の痛みを生じます。
裂肛れっこう
肛門の出口からやや内側の上皮に傷が生じた状態です。
一般に、「切れ痔」と呼ばれます。
裂肛は、便秘等により硬くなった糞便を排泄する際や、下痢の便に含まれる水分が肛門の粘膜に浸透して炎症を起こしやすくなった状態で、勢いよく便が通過する際に粘膜が傷つけられることで生じます。
痔瘻じろう
肛門内部に存在する肛門腺窩と呼ばれる小さなくぼみに糞便のかすが溜まって炎症・化膿を生じた状態です。
体力低下などにより抵抗力が弱まっているときに起こりやすいとされています。
炎症・化膿が進行すると、肛門周囲の皮膚部分から膿が溢れ、その膿により周辺部の皮膚がかぶれ、赤く腫れて激痛を生じます。
痔の対処
- 痔は、ストレスや肛門付近の血管が鬱血うっけつし、肛門への負担がかかることによって生じる肛門の病気の総称で、生活習慣病です。
- 痔の予防には、長時間座ることを避けるほか、食物繊維を摂取し便秘を避けることや香辛料などの刺激性のある食べ物を避けることなどが痔の予防に効果的です。
痔疾用薬の働き
外用痔疾用薬
痔核または裂肛による痛み、痒み、腫れ、出血等の緩和、患部の消毒を目的とする坐剤、軟膏剤または外用液剤です。
外用痔疾用薬は局所に適用されるものですが、坐剤・注入軟膏では、成分の一部が直腸から吸収されて、全身的な影響を生じることがあるので注意が必要です
内用痔疾用薬
比較的緩和な抗炎症作用、血行改善作用のほか、瀉下・整腸成分が配合されたもので、外用痔疾用薬と併せて用いると効果的です。
2)代表的な配合成分、主な副作用
局所麻酔成分
局所麻酔成分は、皮膚や粘膜などの局所的に適用されると、その周辺の知覚神経に作用して刺激の伝達を可逆的に遮断する作用を示します。
可逆的とは「元に戻ることができる」という意味です
痔に伴う痛み・痒みを和らげることを目的として、
- リドカイン
- リドカイン塩酸塩
- アミノ安息香酸エチル
- ジブカイン塩酸塩
- プロカイリン塩酸塩
などの局所麻酔成分が用いられます。
まれにショック(アナフィラキシー)を生じることがあります
鎮痒成分ちんようせいぶん
抗ヒスタミン成分
痔に伴う痒みを和らげる目的で、
- ジフェンヒドラミン塩酸塩
- ジフェンヒドラミン
- クロルフェニラミンマレイン酸塩
が配合されている場合があります。
局所刺激成分
局所への穏やかな刺激によって痒みを抑る効果を期待して、
- 熱感刺激を生じさせる
クロタミトン - 冷感刺激を生じさせる
カンフル
ハッカ油
メントール
などが配合されている場合があります。
ハッカ油は「シソ科ハッカの地上部を水蒸気蒸留して得た油を冷却、固形分を除去した精油」です
抗炎症成分
ステロイド性抗炎症成分
痔による肛門部の炎症や痒みを和らげる成分として、
- ヒドロコルチゾン酢酸エステル
- プレドニゾロン酢酸エステル
が配合されている場合があります。
ステロイド性抗炎症成分が配合された坐剤及び注入軟膏では、含有量によらず長期連用を避ける必要があります
グリチルレチン酸、リゾチーム塩酸塩
比較的緩和な抗炎症作用を示す成分として、
- グリチルレチン酸
- リゾチーム塩酸塩
が配合されている場合があります。
グリチルレチン酸
グリチルリチン酸が分解されてできる成分で、グリチルリチン酸と同様に作用します
組織修復成分
痔による肛門部の創傷の治癒を促す効果を期待して、
- アラントイン
- アルミニウムクロルヒドロキシアラントイネート
(別名アルクロキサ)
が用いられます。
止血成分
アドレナリン作動成分
血管収縮作用により止血効果を期待して、
- テトラヒドロゾリン塩酸塩
- メチルエフェドリン塩酸塩
- エフェドリン塩酸塩
- ナファゾリン塩酸塩
が配合されている場合があります。
メチルエフェドリン塩酸塩については、交感神経系に対する刺激作用によって心臓血管系や肝臓でのエネルギー代謝にも影響を生じることが考えられます。
心臓病、高血圧、糖尿病または甲状腺機能障害の診断を受けた人では症状を悪化させるおそれがあります
収斂保護止血成分
粘膜表面に不溶性の膜を形成し、粘膜の保護・止血の目的で、
- タンニン酸
- 酸化亜鉛
- 硫酸アルミニウムカリウム
- 卵黄油
などが配合されている場合があります。
タンニン酸については、ロートエキス・タンニン坐剤や複方ロートエキス・タンニン軟膏のように、鎮痛鎮痙作用を示すロートエキスと組み合わせて用いられることもあります
殺菌消毒成分
痔疾患に伴う局所の感染を防止する目的で、
- クロルヘキシジン塩酸塩
- セチルピリジニウム塩化物
- ベンザルコニウム塩化物
- デカリニウム塩化物
- イソプロピルメチルフェノール
などが配合されている場合があります。
生薬成分
シコン
ムラサキ科のムラサキの根を基原とする生薬で、新陳代謝促進、殺菌、抗炎症等の作用を期待して用いられます。
セイヨウトチノミ
トチノキ科のセイヨウトチノキの種子を基原とする生薬で、血行促進、抗炎症等の作用を期待して用いられます。
ビタミン成分
肛門周囲の末梢血管の血行を改善する作用を期待して、
- ビタミンE
(トコフェロール酢酸エステル) - ビタミンA油
(レチノール)
が配合されている場合があります。
内用痔疾用薬の配合成分
内用痔疾用薬は、生薬成分を中心として、抗炎症成分、止血成分、ビタミン成分を組み合わせて配合されます。
生薬成分
抗炎症作用を期待して用いられるのは、
- オウゴン
シソ科のコガネバナの周皮を除いた根を基原とする生薬 - セイヨウトチノミ
トチノキ科のセイヨウトチノキの種子を用いた生薬
止血効果を期待して用いられるのは、
- カイカ
マメ科のエンジュの蕾を基原とする生薬 - カイカク
マメ科のエンジュの成熟果実を基原とする生薬
抗炎症成分
リゾチーム塩酸塩
抗炎症成分が配合されていることがあります。
止血成分
カルバゾクロム
毛細血管を補強、強化して出血を抑えます。
その他:ビタミン成分
ビタミンE
(トコフェロール酢酸エステル、トコフェロールコハク酸エステル等)
肛門周囲の末梢血管の血行を促して、鬱血を改善します。
内用痔疾用薬に用いられる漢方処方製剤
乙字湯おつじとう
体力中等度以上で大便が硬く、便秘傾向のあるものの痔核、切れ痔、便秘、軽度の脱肛 に適す。
構成生薬としてダイオウを含む。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害、間質性肺炎を生じることがある。
芎帰膠艾湯きゅうききょうがいとう
体力中等度以下で冷え症で、出血傾向があり胃腸障害のないものの痔出血、貧血、月経異常・不正出血、皮下出血に適す。
1週間位服用して症状の改善がみられないときは、いったん使用を中止して専門家に相談がなされるべきである。
3)相互作用、受診勧奨
相互作用
外用痔疾用薬
外用痔疾用薬は局所に適用されるものですが、坐剤・注入軟膏では、成分の一部が直腸から吸収されて、循環血液中に入り、内服の場合と同様の影響を生じることがあります。
痔疾用薬の成分と同種の作用を有する成分を含む内服薬や医薬部外品、食品等が併用されると効き目が強すぎたり、副作用が現れやすくなることがあります。
内用痔疾用薬
内用痔疾用薬では、生薬成分を主体とした製剤や漢方処方製剤が中心となりますので、生薬成分が配合された医薬品における相互作用が生じます。
受診勧奨
- 一般の生活者においては、痔はその発症部位から恥ずかしい病気として認識されている場合が多く、放置して症状を悪化させてしまうことがあります。
- 痔の悪化により細菌感染が起きると、膿瘍や痔瘻を生じて周囲の組織に重大なダメージをもたらすことがあり、手術を要することもあります。
- 痔の原因となる生活習慣の改善を図るとともに、一定期間痔疾患薬を使用してもなお症状が続く場合には、肛門癌などの重大な病気の可能性があるため、医療機関を受診などの対応が必要です。
その他の泌尿器用薬
1)代表的な配合成分等、主な副作用
- 泌尿器用薬は、残尿感や尿量減少を改善するために用いられる薬です。
尿路消毒成分
ウワウルシ
ツツジ科のクマコケモモの葉を基原とする生薬。
利尿作用のほかに、経口的に摂取した後、尿中に排出される分解代謝物が殺菌消毒作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられます。
残尿感、排尿に際しての不快感のあるものに用いられます。
利尿成分
※利尿作用=尿量増加
- カゴソウ
シソ科のウツボグサの花穂を基原とする生薬
煎薬として残尿感、排尿時の不快感に用いられます - キササゲ
ノウゼンカズラ科のキササゲ等の果実を基原とする生薬 - サンキライ
ユリ科のケナシサルトリイバラの塊茎を基原とする生薬 - ソウハクヒ
クワ科のマグワの根皮を基原とする生薬
煎薬として尿量減少に用いられる - モクツウ
アケビ科のアケビ又はミツバアケビの蔓性の茎を、通例、横切りしたものを基原とする生 - ブクリョウ
サルノコシカケ科のマツホドの菌核で、通例、外層をほとんど除いたものを基原とする生薬
漢方処方製剤
牛車腎気丸ごしゃじんきがん
体力中等度以下
疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少し、むくみがあり、ときに口渇があるものの
下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、痒み、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)に適す。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害、間質性肺炎を生じる。
八味地黄丸はちみじおうがん
体力中等度以下
疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの
下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、痒み、排尿困難、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、尿漏れに適す。
六味丸ろくみがん
体力中等度以下
疲れやすくて尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてり、口渇があるものの排尿困難、残尿感、頻尿、むくみ、痒み、夜尿症、しびれに適す。
猪苓湯ちょれいとう
体力に関わらず
排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適す。
竜胆瀉肝湯りゅうたんしゃかんとう
体力中等度以上
下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの)、頻尿に適す。
構成生薬としてカンゾウを含む。
2)相互作用、受診勧奨等
相互作用
- 漢方処方を構成する生薬には、複数の処方で共通しているものもあり、同じ生薬を含む漢方処方製剤が併用された場合、作用が強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがあります。
- 漢方処方製剤はそれ自体が一つの有効成分として独立したものであり、自己判断によって生薬成分が追加接取された場合、生薬の構成が乱れて処方が成立しなくなるおそれもあります。
小柴胡湯とインターフェロン製剤の相互作用のように、医療用医薬品との相互作用も知られています
受診勧奨
- 残尿感や尿量減少は一時的な体調不良等のほか、泌尿器系の疾患における自覚症状としても現れます。
- 膀胱炎や前立腺肥大などでも、これらの症状が起こることがありますが、その際は一般用医薬品による対処は適当ではありません。
Ⅵ 婦人薬
1)適用対象となる体質・症状
- 婦人薬は、月経および月経周期に伴って起こる症状を中心として、女性に現れる特有な諸症状の緩和と、保健を主たる目的とする医薬品です。
- 効能・効果として、血の道症、更年期障害、月経異常およびそれらに随伴する冷え症、月経痛、腰痛、頭痛、のぼせ、肩こり、めまい、動悸、息切れ、手足のしびれ、こしけ(おりもの)、血色不良、便秘、むくみなどに用いられます。
月経
月経の仕組み
子宮の内壁を覆っている膜が剥がれ落ち、血液(経血)とともに排出される生理現象で、女性の一生のうち妊娠可能な期間に、妊娠期間中などを除き、ほぼ毎月、周期的に起こります。
月経の周期
月経周期は、個人差があり、約21~40日と幅があります。
視床下部や下垂体で産生されるホルモンと、卵巣で産生される女性ホルモンが月経周期に関与します。
閉経
加齢とともに卵巣からの女性ホルモンの分泌が減少していき、月経が停止して、妊娠可能な期間が終了することを閉経といいます。
閉経の前後には、更年期と呼ばれる移行的な時期があり、体内の女性ホルモンの量が大きく変動することがあります
女性に現れる特有な諸症状
更年期障害の症状
女性ホルモンの量が大きく変動することがあるため更年期においては、月経周期が不規則になります。
そのほか、不定愁訴として血の道症の症状に加え、冷え症、腰痛、頭痛、頭重、ほてり、のぼせ、立ちくらみ等の症状が起こることがあります。
血の道症の原因等
- 血の道症月経、妊娠、分娩、産褥(分娩後、母体が通常の身体状態に回復するまでの期間)、更年期等の生理現象や、流産、人工妊娠中絶、避妊手術など原因とする異常生理によって起こるとされ、範囲が更年期障害よりも広く、年齢的に必ずしも更年期に限りません。
- 月経前症候群
月経の約10~3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、興奮、抑鬱などの精神症状です。
2)代表的な配合成分等、主な副作用
女性ホルモン成分
人工的に合成された女性ホルモンの一種であるエチニルエストラジオール、エストラジオールを補充するもので、膣粘膜又は外陰部に適用されるものがあります。
これらの成分は適用部位から吸収されて循環血液中に移行します
妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されており、妊娠または妊娠していると思われる女性には使用を避ける。
- 乳汁中に移行するため、母乳を与える女性では使用を避ける
- 長期連用により血栓症を生じるおそれがある
- 乳癌や脳卒中などの発生確率が高まる可能性がある
継続して使用する場合には、医療機関を受診するよう促すべきです
生薬成分
サフラン、コウブシ
鎮静、鎮痛、女性の滞っている月経を促す。
- サフラン
アヤメ科のサフランの柱頭を基原とする生薬 - コウブシ
カヤツリグサ科のハマスゲの根茎を基原とする生薬
日本薬局方収載のサフランを煎じて服用する製品は、冷え症及び血色不良に用いられる。
センキュウ、トウキ、ジオウ
血行を改善し、血色不良や冷えの症状を緩和するほか、強壮、鎮静、鎮痛等の作用を期待して用いる。
- センキュウ
セリ科のセンキュウの根茎を、通例、湯通ししたものを基原とする生薬 - トウキ
セリ科のトウキ又はホッカイトウキの根を、通例、湯通ししたものを基原とする生薬 - ジオウ
ゴマノハグサ科のアカヤジオウ等の根又はそれを蒸したものを基原とする生薬
その他の生薬成分
- シャクヤク、ボタンピ
鎮痛鎮痙・鎮静作用 - サンソウニン、カノコソウ
鎮静作用 - カンゾウ
抗炎症作用 - オウレン、ソウジュツ、ビャクジュツ、ダイオウ
胃腸症状 - モクツウ、ブクリョウ
利尿作用
ビタミン成分
疲労時に消耗しがちなビタミンの補給を目的として、
- ビタミンB1(チアミン)
- ビタミンB2(リボフラビン)
- ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)
- ビタミンB12(シアノコバラミン)
- ビタミンC(アスコルビン酸等)
が配合されている場合があります。
そのほか、血行を促進する目的で、
- ビタミンE(トコフェロール)
が配合されている場合があります。
その他
滋養強壮作用を目的として、
- アミノエチルスルホン酸(タウリン)
- グルクロノラクトン
- ニンジン
が配合されている場合があります。
漢方処方製剤
女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤は、
- 温経湯
- 温清飲
- 加味逍遙散
- 桂枝茯苓丸
- 五積散
- 柴胡桂枝乾姜湯
- 四物湯
- 桃核承気湯
- 当帰芍薬散
などがあります。
漢方処方製剤の適応、留意事項
温経湯うんけいとう
※カンゾウ含む
体力中等度以下
手足がほてり、唇が乾くものの
月経不順、月経困難、こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、手あれに適す。
温清飲うんせいいん
体力中等度
皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせるものの
月経不順、月経困難、血の道症、更年期障害、神経症、湿疹・皮膚炎に適す。
まれに重篤な副作用として、肝機能障害を生じることが知られています
加味逍遙散かみしょうようさん
※カンゾウを含む
体力中等度以下
のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向のあるものの
冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症に適す。
まれに肝機能障害、腸間膜静脈硬化症を生じます
桂枝茯苓丸けいしぶくりょうがん
比較的体力があり
ときに下腹部痛、肩こり、頭重、めまい、のぼせて足冷えなどを訴えるものの
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、血の道症、肩こり、めまい、頭重、打ち身(打撲症)、しもやけ、しみ、湿疹・皮膚炎、にきびに適す。
まれに肝機能障害を生じることがあります
五積散ごしゃくさん
※カンゾウ・マオウを含む
体力中等度又はやや虚弱
冷えがあるものの
胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適す。
柴胡桂枝乾姜湯さいこけいしかんきょうとう
※カンゾウを含む
体力中等度以下で
冷え症、貧血気味、神経過敏で、動悸、息切れ、ときにねあせ、頭部の発汗、口の渇きがあるものの
更年期障害、血の道症、不眠症、神経症、動悸、息切れ、かぜの後期の症状、気管支炎に適す。
まれに間質性肺炎、肝機能障害を生じることがあります
四物湯しもつとう
体力虚弱
冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの
月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復に適す。
桃核承気湯とうかくじょうきとう
※カンゾウを含む
体力中等度以上
のぼせて便秘しがちなものの
月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症に適す。
当帰芍薬散とうきしゃくやくさん
体力虚弱
冷え症で貧血の傾向があり疲労しやすく、ときに下腹部痛、頭重、めまい、肩こり、耳鳴り、動悸などを訴えるものの
月経不順、月経異常、月経痛、更年期障害、産前産後あるいは流産による障害、めまい・立ちくらみ、頭重、肩こり、腰痛、足腰の冷え症、しもやけ、むくみ、しみ、耳鳴り、低血圧に適す。
相互作用、受診勧奨
相互作用
注意すべき医薬品
他の婦人薬、生薬成分を含有する医薬品が併用
⇒効き目が強すぎたり、副作用が起こりやすくなる
使用に際しての注意
一般の生活者においては「痔の薬」と「更年期障害の薬」などは影響し合わないとの誤った認識がなされることも考えられる
⇒医薬品の販売等に従事する専門家において適宜注意を促していくことが重要
受診勧奨
内服で用いられる婦人薬は、比較的作用が穏やかで、長期間使用することで効果が得られます。
ですが、効果がみられないのに漫然と使用継続することは適当ではありません
月経痛等の症状の場合
年月の経過に伴って月経痛が次第に増悪していく場合や大量の出血を伴う場合
⇒子宮内膜症などの病気の可能性がある
月経不順
⇒月経前症候群を悪化させる要因ともなる
おりものの異常の場合
おりものの量が急に増えたり、膿や血液が混じっている場合
⇒膣や子宮が炎症や感染症を起こしている可能性がある
月経以外の不規則な出血(不正出血)がある場合
⇒すみやかに医療機関へ受診するなどが必要
更年期障害の不定愁訴の場合
不定愁訴とされる症状の背景に、原因となる病気が存在する可能性もあります。
うつ状態
⇒うつ病などが背景に隠れている場合がある
のぼせ・ほてり
⇒高血圧や心臓、甲状腺の病気でもおこる
原因が見出された場合には、その治療が優先されることが優先される必要があります
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