「第3章:主な医薬品とその作用」の4回目!
※この記事は「平成30年3月 試験問題の作成に関する手引き」をもとに作成しています。
鎮暈薬(ちんうんやく)
●鎮暈薬(ちんうんやく)=乗物酔い防止薬
めまい(眩暈)は、平衡機能に異常が生じて起こる症状で、内耳にある平衡器官の障害や、中枢神経系の障害など、さまざまな要因により引き起こされます。
鎮暈薬(乗物酔い防止薬)は、乗物酔い(動揺病)によるめまい、吐きけ、頭痛を防止し、緩和することを目的とする医薬品です。
1)代表的な配合成分、主な副作用
鎮暈薬には、次のような成分が配合されています
●抗めまい成分
●抗ヒスタミン成分
●抗コリン成分
●鎮静成分
●キサンチン系成分(中枢神経を興奮させる成分)
●局所麻酔成分
●その他
●抗めまい成分・抗ヒスタミン成分・抗コリン成分
⇒いずれも眠気を促す作用がある
抗めまい成分
ジフェニドール塩酸塩
●内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流改善作用を示します。
●副作用として、抗ヒスタミン成分や抗コリン成分と同様な頭痛、排尿困難、眠気、散瞳、口渇が現れることがあります。
抗ヒスタミン成分
●延髄にある嘔吐中枢への刺激や、内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示します。
抗ヒスタミン成分には抗コリン作用を示すものが多いですが、抗コリン作用も乗り物によるめまい、吐きけなどの防止・緩和に寄与すると考えられています
●ジメンヒドリナート
⇒ジフェンヒドラミンテオクル酸塩の一般名
⇒乗物酔い防止薬に配合される
●メクリジン塩酸塩
⇒乗物酔い防止薬に配合される
⇒ほかの抗ヒスタミン成分と比べ作用発現が遅く持続時間が長い
抗コリン成分
●中枢に作用して自律神経系の混乱を軽減させる
●末梢では消化管の緊張を低下させる作用を示します。
●スコポラミン臭化水素酸塩水和物
⇒乗物酔い防止に古くから用いられている抗コリン成分
⇒消化管からよく吸収され、ほかの抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすい
鎮静成分
●ブロモバレリル尿素
●アリルイソプロピルアセチル尿素
乗物酔いの発現には不安や緊張などの心理的な要因による影響も大きく、それらを和らげることを目的として配合されます
その他の配合成分
キサンチン系成分
- カフェイン
- ジプロフィリン
脳に軽い興奮を起こさせて、平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させます
●カフェインには、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用も期待される
⇒抗ヒスタミン成分などの眠気を取るためではない
局所麻酔成分
- アミノ安息香酸エチル
胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐きけを抑えます
●アミノ安息香酸エチルは、6歳未満への使用は避ける
その他の成分
- ビタミン成分
- ピリドキシン塩酸塩
- ニコチン酸アミド
- リボフラビン
●吐きけの防止目的で、補助的に配合されている場合がある
2)相互作用、受診勧奨等
相互作用
●抗ヒスタミン成分
●抗コリン成分
●鎮静成分
●カフェイン類
などの配合成分が重複して、鎮静作用や副作用が強く現れるおそれがあります。
受診勧奨等
●3歳未満の乳幼児向けの製品はない
⇒3歳未満では自律神経が未発達のため乗物酔いがほとんどない
3歳未満の乳幼児乗り物が移動中にむずがるような場合には、他の要因を考慮しましょう
●日常生活で、めまいがたびたび生じる場合には、医療機関への受診が必要
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)
●小児にみられる症状
小児では、身体的な問題がなくても、夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状が現れることがありますが、不安や興奮から生じる情緒不安定・神経過敏が要因のひとつとも考えられています。
●小児鎮静薬の作用
小児鎮静薬は、夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状を鎮めるほか、症状の原因となる体質改善を主眼としているものが多く、比較的長期間(1か月位)継続して服用されることがあります。
1)代表的な配合生薬等、主な副作用
●小児の疳は「乾」という意味もあり、痩せて血が少ないことから生じると考えられている
●小児鎮静薬には鎮静作用のほか、血液の循環を促す生薬成分が配合されている
鎮静と中枢刺激のように相反する作用の生薬成分が配合される場合もありますが、身体の状態によって反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられています
代表的な配合生薬等、主な副作用
ゴオウ、ジャコウ
●緊張や興奮を鎮め、血液の循環を促す作用を期待
レイヨウカク
●ウシ科のサイカレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角を基原とする生薬
●緊張や興奮を鎮める作用を期待
ジンコウ
●ジンチョウゲ科のジンコウ、その他同属植物の材、特にその辺材の材質中に黒色の樹脂が沈着した部分を採取したものを基原とする生薬
●鎮静、健胃、強壮などの作用を期待
その他
リュウノウ、動物胆(ユウタンを含む。)、チョウジ、サフラン、ニンジン、カンゾウ等が配合されている場合がある。
カンゾウについては、小児の疳を適応症とする生薬製剤では主として健胃作用を期待して用いられる。
漢方処方製剤
漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合でも、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととなっています
小児の疳を適応とする漢方処方製剤
●柴胡加竜骨牡蛎湯さいこかりゅうこつぼれいとう
●桂枝加竜骨牡蛎湯けいしかりゅうこつぼれいとう
●抑肝散よくかんさん
●抑肝散加陳皮半夏よくかんさんかちんぴはんげ
●小建中湯しょうけんちゅうとう
服用の注意点
●乳幼児に使用する場合
⇒体重あたりのグリチルリチン酸の摂取過多
●小児の夜泣きに使用する場合
⇒柴胡加竜骨牡蛎湯・桂枝加竜骨牡蛎湯・抑肝散・抑肝散加陳皮半夏
⇒1週間位服用しても症状が改善しないときは、服用を中止して専門家に相談するなどの対応が必要
小建中湯
●体力虚弱で疲労しやすく腹痛があり、血色がすぐれず、ときに動悸、手足のほてり、冷え、寝汗、鼻血、頻尿および多尿などを伴うものの
小児虚弱体質、疲労倦怠、慢性胃腸炎、腹痛、神経質、小児夜尿症、夜なきに適すとされる
服用の注意点
●カンゾウを含む
●乳幼児に使用される場合は体格の個人差から体重当たりのグリチルリチン酸の摂取量が多くなることがある
●小建中湯は、比較的長期間(1か月位)服用することがあるので、特に留意する
2)相互作用、受診勧奨
相互作用
●生薬成分に配合されている生薬または漢方処方を構成する生薬には、複数の製品や処方で共通しているものもある
●同じ生薬を含む漢方処方製剤が併用されると、作用は強く現れたり、副作用を生じやすくなるおそれがある
受診勧奨
●乳幼児は状態が急変しやすく、自分の体調を適切に伝えることが難しい
⇒保護者等が状態をよく観察し、医薬品の使用の可否を見極めることが重要
●小児鎮静薬を一定期間又は一定回数服用させても症状の改善がみられない場合
⇒ほかの原因(食事アレルギーやウイルス性胃腸炎など)の可能性も考えられる
⇒漫然と使用せず医療機関を受診させるなどの対応が必要
●乳幼児ではしばしば一過性の下痢や発熱を起こすことがある
⇒激しい下痢や高熱の場合には、脱水症状につながるおそれがある
⇒医師の診療を受けさせる必要がある
●吐き出したものが緑色をしていたり、血が混じっている
●吐き出すときに咳こんだり、息をつまらせたりする
⇒医師の診療を受けさせる必要がある
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