前回、「【第1章】Ⅲ適切な医薬品選択と受診勧奨」の勉強法やポイントを紹介しました。
今回は、その続き「薬害の歴史」だよ
第1章はこれが最後、あとちょっと頑張ろう!
問題作成ポイントはこれ!
❶医薬品の本質、効き目や安全性に影響を与える要因等について理解していること
❷購入者等から医薬品を使用しても症状が改善しないなどの相談があった場合には、医療機 関の受診を勧奨するなど、適切な助言を行うことができること
❸薬害の歴史を理解し、医薬品の本質等を踏まえた適切な販売等に努めることができること
1)医薬品による副作用等に対する基本的な考え方
副作用は、それまで知られているものだけでなく、科学的に解明されていない未知のものが生じる場合もあります
医薬品による副作用は、
●眠気・口渇
など、比較的よく見られるものだけでなく
●死亡・日常生活に支障をきたす
ほどの重大なものまで、その程度は様々です。
2)医薬品による副作用等にかかる主な訴訟
①サリドマイド訴訟
概要
妊婦に使用した際、出生児に
●四肢欠損
●視聴覚障害
●心肺機能障害
などの先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生しました。
サリドマイド訴訟とは
出生児に先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟です
薬害
サリドマイドは催眠鎮静剤として承認されたが、
●血管新生を妨げる
副作用がありました。
鎮静作用を目的として、胃腸薬にも配合された!
妊婦が摂取した場合、サリドマイドは
●血液ー胎盤関門
を通過して胎児に移行します。
血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体のうちS体のみが有する作用です
※光学異性体とは?
・鏡に映ったように左右対称の関係にある化合物。
・それぞれR体とS体と呼び、手のひらに例えることが多い。
サリドマイドの光学異性体のうち、
●S体⇒血管新生を妨げる
●R体⇒鎮静作用
R体とS体の作用は頻出問題、しっかり覚えましょう
歴史
- 1957年 西ドイツ(当時)販売開始
- 1958年1月 日本 販売開始
- 1961年11月 西ドイツ
・催奇形性について警告
・製品が回収 - 日本
・西ドイツ企業から勧告が届く
・翌年もその企業から警告を受ける
★1962年5月
・出荷停止
★1962年9月
・販売停止
・回収措置
●1963年
・6月 製薬企業を被告として提訴
・12月 国及び製薬企業を被告として提訴
●1974年10月
・和解が成立
事件後の対応
WHO加盟国を中心に
●市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識
●各国における副作用情報の収集体制の整備が図られる
こととなりました。
サリドマイド事件以降、医薬品の承認にあたっては、 光学異性体の有無や有効性、安全性等への影響についても確認、評価がなされるようになりました
②スモン訴訟
概要
販売されていた整腸剤の、
●キノホルム製剤で
●亜急性脊髄視神経症(スモン)
に罹患しました。
整腸剤として発売されていたキノホルム製剤を使用して、亜急性脊髄視神経症(スモン)になったことに対する損賠賠償訴訟です
薬害
スモンの症状として、
- 初期には腹部の膨満感
- 激しい腹痛を伴う下痢
- 下半身の痺れや脱力
- 歩行困難
などが現れます。
歴史
●1924年~
・整腸剤として販売
●1958年頃~
・消化器症状を伴う特異な神経症状が報告
・米国では1960年にアメーバ赤痢に使用が制限
●1970年8月
・スモンの原因はキノホルムであるとの説が発表
・9月に販売停止
●1971年5月
・国及び製薬企業を被告として提訴
●1977年10月
・東京地裁において和解が成立
●1979年9月
・全面和解が成立
医薬品副作用被害救済制度の創設
1979年、サリドマイド訴訟スモン訴訟を契機として、
- 医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図る
- 医薬品副作用被害救済制度
が創設されました。
サリドマイド訴訟スモン訴訟を契機として「医薬品副作用被害救済制度」が創設。何が創設されたのか出題されます!
③HIV訴訟
概要
血友病患者が、
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した
- 血液凝固因子製剤の投与を受け
HIVに感染しました。
血友病患者が血液凝固因子製剤の投与を受け、HIVに感染したことに対する損賠賠償訴訟です
歴史
●1989年
・5月 大阪地裁で提訴
・10月 東京地裁で提訴
●1995年
・10月 大阪地裁和解勧告
●1996年
・3月 東京地裁和解勧告
●1996年
・3月両地裁で和解が成立
その後の対応
血液製剤の安全確保対策として、
- 検査や献血時の問診の充実
- 薬事行政組織の再編
- 情報公開の推進
- 健康危機管理体制の確立
などがなされました。
④CJD訴訟
概要
脳外科手術で使用された、
- ヒト乾燥硬膜が
- プリオンに汚染されていて
移植された患者にCJDが発生しました。
ヒト乾燥硬膜を介して、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損賠賠償訴訟です
薬害
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)は、
- 細菌でもウイルスでもない
- タンパク質の一種であるプリオンが原因
とされています。
ヒト乾燥硬膜の原料は、
- 採取された段階でプリオンに汚染されている場合がある
- プリオン不活化のための十分な化学的処理が行われないまま製品として流通
脳外科手術で移植された患者にCJDが発生しました。
歴史
国、輸入販売業者及び製造業者を被告として、
- 1996年11月 大津地裁で提訴
- 1997年9月 東京地裁で提訴
- 2001年11月
・両地裁で和解勧告 - 2002年3月
・両地裁で和解が成立
その後の対応
本訴訟の和解に際して、国(厚生労働大臣)は、
- 生物由来製品等の安全性を確保するため必要な規制の強化
- 生物由来の医薬品等による被害の救済制度を早期に創設できるよう努める
ことを誓約しました。
医薬品の販売等に従事する者においては、薬害事件の歴史を十分に理解し、医薬品の副作用等による健康被害の拡大防止に関して責任の一端を担っている事を肝に銘じておく必要があります
<薬害訴訟ポイント>
サリドマイド・スモンを契機に創設
●医薬品副作用被害救済制度
HIV・CJDを契機に創設
●生物由来の医薬品等による被害の救済制度
・勉強法①【第1章】Ⅰ医薬品概論
・勉強法②【第1章】Ⅱ 医薬品の効き目や安全性に影響を与える要因
・勉強法③【第1章】Ⅲ適切な医薬品選択と受診勧奨
・いまココ▶勉強法④【第1章】Ⅳ 薬害の歴史
学習が終わったら過去問題を解いてみよう!